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東京高等裁判所 昭和55年(ラ)118号 決定

抗告人 甲野冬子

右代理人弁護士 茂木博男

被相続人 乙山夏子

主文

原審判を次のとおり変更する。

被相続人亡乙山夏子の遺産である原審判別紙目録記載相続財産のうち、同目録記載(3)の不動産及び(4)の金四三四万九六九七円(利息があれば、これも含む。)を抗告人に分与する。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は、別紙記載のとおりである。

二  当裁判所もまた、抗告人を民法九五八条の三にいわゆる特別縁故者に該当するものと判断する。その理由は、原審判書二丁裏初行から五丁裏八行目「考えられる。」までに記載されている原審判の説示のとおりであるから、これを引用する(ただし、同三丁表初行「四月二八日」を「五月五日」に、同所九行目「同年春頃には」を「そのうちに」にそれぞれ改める。)。

そして、原審記録から認定される縁故関係の経緯・内容、相続財産の種類・数額、恩情を受けたと忖度される被相続人の意思、その葬祭等をも主宰しまた本件相続財産の管理にも当たってきた抗告人の尽力その他一切の事情に、当審において提出された上申書・申請書・供述書の各記載を総合すると、本件相続財産のうち、原審判別紙目録記載(3)の土地及び同(4)の預金四三四万九六九七円(このほかに経過利息があれば、これを含むものとする。)を分与すべく、またこれをもって足りるものとするのを相当とする。もっとも、原審記録中の昭和五四年一二月一七日付け調査報告書(七三丁以下)によれば、同目録記載(1)の土地は、市街化調整区域内にある九三五平方メートルの畑で、その時価は金七〇〇万円強であること、同目録記載(3)の土地は、七九三・三八平方メートルの宅地で、右(1)の土地よりも面積はやや狭いが、宅地であるため価額はむしろ高く、右(1)の土地の時価金七〇〇万円を相当上回る(右報告書に表れている数値から概算される限りではあるが、金一〇〇〇万円を若干上回る。)ことが、それぞれ認められる。このように、右(3)の土地は価格において相当高額なものであるけれども、その故をもってこれを抗告人に分与するのを相当でないとする事情は、これを認めるに足りる証拠がなく、そのほか一件記録を精査するも、以上の認定判断を左右すべき事情を認めることができない。

三  よって、以上の当裁判所の判断と異なる原審判は一部不当であるから、これを変更することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 岡松行雄 裁判官 賀集唱 福井厚士)

〈以下省略〉

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